ドイツで語学パートナーをしていた友人に勧められた本。彼はドイツ語で読んでいたんですが、英語版があるはずだからそれで読んでみなよ~と。ただ、英語を理解は出来るけれども途中で疲れてしまって内容が全く頭に入らないというのは経験上分かっていたので、Amazonで探して日本語版を購入。日本に帰国しましたので、ようやく手に取ることが出来ました。
ネットを見てみたところ、さすがはベストセラーで書評もたくさん転がっていたので、あくまで自分の記憶への定着を意識して簡単に。
「ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか?」というこのタイトルですが、本書全体を簡潔に表したとても素晴らしいタイトルです。細かいテーマが散らばってはいるんですが、芯を貫いているのは「どのように思考が決定“されている”か」ということを「ファスト」な過程(システム1)と「スロー」な過程(システム2)に分解して説明しているという点。
直感的に分かること、例えば、前から歩いてきた人が男性か女性かの判断や1+1の計算は自分がシステム2を起動させずとも、システム1が直感的に行うことが出来ます。むしろ、システム1の起動を拒否することは不可能で、1+1は?と聞かれると否が応でも答えが頭に浮かんでしまいます。
ですが一方で、前から歩いて来る人が筋骨隆々でサラサラのロングヘアー、お化粧ばっちりだったら?その際には人はシステム2を起動させ、スローの思考にシフトチェンジ。直感ではなく、様々な事例を思い浮かべるなどしてその人が男性か女性であるかの判断を下します。
このように人は、システム1とシステム2を使い分けて思考を行っています。そこで問題になるのは、人がシステム2を起動させるのには労力が必要で、出来ることならばシステム2を利用せずに問題を解決しようとする点です。刑務所からの仮釈放者を決定する過程で行った調査では、仮釈放請求は棄却するのが基本という前提の下で、昼食直後に書類に目を通された受刑者の方が請求の通過率が高く、業務の終盤に目を通された受刑者の請求の通過率はゼロという結果でした。
即ちこれは、昼食後で疲れも少ない状況ではシステム2を動員し可否を熟考していたものの、疲れが出るとシステム1のみを利用し、「仮釈放請求は棄却が基本」という原則だけを参照して請求の可否を決してしまっていたということです。
このようなことから著者は、システム2を動員させることに人は消極的であるという問題点を常に意識し、ものを考える上でしっかりとシステム2を動員することが重要だと述べています。
本当はもっと書くべきことがあるんでしょうが、通しで読んでみて意識に強く残っているのはこの部分なので、ここだけまとめてみました。