拡声器のような古ぼけたスピーカーから、演歌が滔滔と流れ続ける。
昭和をそのまま切り取ったような雰囲気、空気、景色。
それでいて入湯料420円はペイペイで。昭和と令和の融合、何とも絶妙な塩梅である。
テレビの流れる脱衣所。
浴場とサウナは脱衣所を介して隔てられており、サウナからは脱衣所に流れるテレビを拝見するかたち。
サウナでかいた汗をテレビを前に冷ます人もいたりと、脱衣所の出入りが忙しないのがこれまたどこか昭和の色を感じさせる。
浴場にも演歌が響く。
銭湯の壁絵といえば富士の山であるが、壁には堂々と噴煙をあげる桜島。
湯はかけ流しだそうだが、「お客様にお楽しみいただくために」入浴剤も投入しているそうである。
かけ流しの湯をままに使わないだなんてもったいない!などと思わせない、その心遣いを心に容れてしまう余裕を生み出す不思議な空間である。
塩湯とやら。塩を体に塗って5分~10分置き…
いや、10分も身体を休められる場所もないような。
心遣いも、それが行き届かない部分も、番台のおじいさんの物腰柔らかな立ち居振る舞いにすべてが吸い込まれてしまう。
支払のためにカメラをQRコードに向けると、ほんの少し、コードの向きをカメラに向けなおしてくれたおじいさん。
“心遣い”というよりも、人のためにできることに自然に身体が動いてしまっているかのような、そんな奥ゆかしいものを随所に感じた素晴らしい銭湯体験であった。
「昭和はここにある|かごっま温泉(鹿児島)|温泉のすゝめ59」への1件のフィードバック